この記事の執筆者

あい長野クリニック 院長

袖山 治嗣 (そでやま はるつぐ)

あい友会では各地に訪問診療を提供しています

私は、2023年3月に長年勤務した長野赤十字病院を定年退職し、5月に「あい友会」に入職しました。
あい友会は、本拠地の太田のほか、庄内、駒形（前橋市）、逗子、熊谷に訪問診療を提供するクリニックを展開しており、来年は長野のほか、つくばにもクリニックを新設する予定となっています。
各クリニックの患者数は右肩上がりに増加しており、訪問診療に対する期待は大きいと感じています。

季節の移ろいを感じるあい庄内クリニック

私は、この7~10月、患者さんが増えて人手が不足していた「あい庄内クリニック」のお手伝いをしていました。
「あい庄内クリニック」は山形県東田川郡三川町、庄内平野のちょうど真ん中にあります。
庄内平野の北には最上川の河口で北前船の寄港地として栄えてきた商人たちの町、酒田市があり、南には鶴ヶ岡城の城下町として発展してきた武家の町、鶴岡市があります。
庄内平野には、長野では見ることのできない見事に真っ平らで広大な水田が見渡す限り続いています。

最上川やあい庄内クリニックの横を流れる赤川などがもたらす水にも恵まれ、庄内が豊かな米どころであることがよく理解できます。
平野の北には鳥海山、南東には出羽三山がそびえ、庄内平野のどこにいても望むことができます。
秀峰「鳥海山」は出羽富士とも呼ばれ、標高2,236mの山頂から日本海の海抜0mまで裾野が真っ直ぐにダイナミックに伸び、庄内平野を見守っているかのようです。

「ふるさとの　山に向ひて　言ふことなし　ふるさとの山はありがたきかな」の山（本当は岩手山ですが）とはこのような山であろうと思い、クリニックのスタッフに尋ねたのですが、答えは否でした。
山岳信仰の聖地である出羽三山の羽黒山は現世の幸せを祈る山、月山は死後の安楽と往生を祈る山、湯殿山は生まれ変わりを祈る山と考えられており、その中心にある霊峰「月山」の山頂は雲に覆われていることが多く、山の全貌を見せてくれる日はなかなかありませんでした。

今まで、明るいうちは病院の中にいることが多かった、あるいは、景色を味わう心の余裕のなかった私には、季節で移ろっていく庄内地方の風景はいつも新鮮で、毎日の訪問診療の楽しみの一つでした。

長野の美しさも再認識

庄内から帰り、長野の風景も美しいことを再認識しました。
長野盆地は近くを小さな山々に囲まれていますので、戸隠山、飯綱山、妙高山、黒姫山、斑尾山の北信五岳や北アルプスの峰々などもその全容を確認することのできる場所は限られています。

訪問診療中に山々が美しく見える絶景ポイントが見つけられるかもしれません。
そんなポイントの一つ、犀川から見る雪を冠った北アルプスの姿は、時に神々しくもあり、長野高校の校歌「山また山」にも歌われています。

庄内の美しい風景に関連したとりとめのない話でした。